五年使っていたダイソンのスティック型掃除機が、不調になった。
電源は入るが、数秒で止まる。
これまでにバッテリーは二、三回交換している。
ヘッドの一部は欠けていた。
直そうと思えば、直せたと思う。
実際、ヘッド単品で買えないか調べもした。
型番、純正品、互換品。
調べているうちに、だんだん面倒になった。
価格も、地味に高い。
そのとき気づいたのは、
「直せるかどうか」ではなく、
そこに自分のやる気を使う前提になっているという違和感だった。
今回選んだのは、
Shark EVOPOWER SYSTEM BOOST+ コードレススティッククリーナー LC701J。
名前は長いけれど、
使い始めてからはずっと「ブースト+」と呼んでいる。
正直に言うと、
掃除機はダイソンで間違いないと思っていた。
深い理由はない。
吸引力、ブランド、評判。
いわゆるイメージマーケティングに、きれいにハマっていたのだと思う。
掃除機なのだから、
吸引力が一番大切。
それは理屈として、何も間違っていない。
ただ、
自分の生活に当てはめたとき、
それ以外のメリットが、よく分からなかった。
階段を掃除する。
短い時間でも、ほぼ毎日使う。
そう考えると、重さはどうしても気になった。
吸う力がどれだけ強くても、
手に取るまでに構える道具は、
結局、使われなくなる。
欲しかったのは、
一番すごい掃除機ではない。
手に取りやすいもの。
「掃除」という行為が、
できるだけ重くならないもの。
次の掃除機を探すとき、
まずChatGPTにおすすめを聞いた。
そのあと、価格ドットコムを見て、
YouTubeでレビュー動画をいくつか流した。
以前なら、
性能や価格を中心に比較していたと思う。
でも今回は、
別のところが気になっていた。
発売日。
フラグシップモデルかどうか。
そして、そのメーカーがきちんと続いていそうか。
売れていない製品は、
サポートが早く切れる。
純正部品も、互換部品も、
時間が経つほど見つけづらくなる。
そこそこ長く使う道具なら、
性能よりも、
**「途中で困らないか」**のほうが大事だった。
選んだのは、Shark EVOPOWER SYSTEM BOOST+(LC701J)だった。
以降は、ブースト+と呼ぶ。
七万円。
掃除機としては、安くはない。
ただ、使ってみてすぐに分かった。
これは「考えなくていい」掃除機だということが。
ステーションがあるから、
毎回ゴミを捨てなくていい。
バッテリーは最初から二つ。
予備も含めて、充電が仕組みとして組み込まれている。
吸引力はセンサーが自動で調整する。
自分で判断しなくていい。
青色LEDでゴミが照らされる。
探さなくていい。
光に浮かび上がったゴミを、なぞるだけ。
軽い。
トリガーを引き続けなくていい。
どれも派手ではない。
でも、一つひとつが、
自分の判断や気力を使わずに済む設計だった。
ここで、ようやく腑に落ちた。
これが、
いまの自分にとってのコスパなんだと。
価格が安いことでも、
性能が一番高いことでもない。
自分のやる気や思考力を、消耗しないこと。
多少高くても、
毎回の行為でエネルギーを奪われないなら、
そのほうが長期的には安い。
掃除機ひとつで、
人生が変わるわけではない。
ただ、
選び方には、確実に生き方が出る。
・不便さを自分で埋める前提にしていないか
・我慢をコスパだと勘違いしていないか
・価格だけを見て、本当の負担を見落としていないか
そんなことを、
考えるきっかけにはなった。
人生における本当のコスパとは何か。
掃除機の話ひとつでも、
意外と多くのことが見えてくる。
兆しは、
だいたい生活の中にある。